・10kHzと100kHzの方形波応答。

・上から位相補正なし、位相補正5pF、10pF、20pFの場合。どれも2現象で下が入力波形、上が出力波形。
・縦軸は下が0.5V/div、上が5V/div。
10kHz 100kHz
No-121 MCFA 帰還回路5.6kΩ+1kΩ 位相補正なし No-121 MCFA 帰還回路5.6kΩ+1kΩ 位相補正なし
・この場合位相補正をしなくとも発振はしない。16.4dBのゲインを持たせた設定であるためか。仕上がりゲインを減らしていくと発振に至るかもしれない。

・2MHz程度のリンギングが生じているが、発振には至っていないので、このままでも大丈夫といえば大丈夫だが、リンギングは発振の入り口でもあり、もう少し余裕を確保すべきだろう。

・位相補正を5pF、10pF、20pFと増やして同様に方形波応答を観る。
No-121 MCFA 帰還回路5.6kΩ+1kΩ 5pF No-121 MCFA 帰還回路5.6kΩ+1kΩ 5pF
No-121 MCFA 帰還回路5.6kΩ+1kΩ 10pF No-121 MCFA 帰還回路5.6kΩ+1kΩ 10pF
No-121 MCFA 帰還回路5.6kΩ+1kΩ 20pF No-121 MCFA 帰還回路5.6kΩ+1kΩ 20pF
・位相補正を5pF、10pF、20pFと増やすほどにリンギングが早期に収束し、20pFのこの場合には立ち上がりにオーバーシュートが残るだけになる。位相補正をさらに倍の40pFにすればそのオーバーシュートもなくなりそうだ。

・が、20pFの場合の100kHz方形波応答で明らかなように、位相補正容量が増えるほどに立ち上がり、立ち下がりの肩がなで肩に丸くなっていくことが分かる。要するに位相補正が増えるごとに高域での周波数帯域が狭まるのである。(といってもfc=数百kHzの帯域だが。)

・言い方を変えると、すなわちスルーレートが悪化するのだ。

なので、スルーレートを観る。

・そのために、100kHz方形波を出力が飽和するまでところまで大きくして入力する。

No-121 MCFA 帰還回路5.6kΩ+1kΩ
 位相補正 5pF 1V/div&10V/div
No-121 MCFA 帰還回路5.6kΩ+1kΩ
 位相補正 10pF 1V/div&10V/div
No-121 MCFA 帰還回路5.6kΩ+1kΩ
 位相補正 20pF 1V/div&10V/div
No-121 MCFA 帰還回路5.6kΩ+1kΩ
 位相補正 40pF 1V/div&10V/div
・数字の順番に、位相補正が5pF、10pF、20pF、40pFの場合。

・入出力の方形波を重ねてあるが、角張って方形波の様相を残している方が入力波形で、縦軸は1V/div。その内側にあって、位相補正容量が増えるほどに方形波の立ち上がり、立ち下がりが傾いて行く方が出力波形で、こちらの縦軸は10V/div。電源電圧が±18Vなので出力電圧はこれが限界だ。なお、時間軸(横軸)は1uS/div。

・どの場合も立ち上がりにオーバーシュートが残っており、この場合このオーバーシュートをなくすためには40pF以上の位相補正が必要であることが分かる。

・で、写真で明らかなように、位相補正のために位相補正容量Cを増やすほどにスルーレートは劣化する。それは特に立ち上がりで著しいが、その立ち上がりでスルーレートを読み取ってみると、位相補正5pFの場合で60V/uS程度、10pFでは40V/uS程度、20pFの場合には20V/uS程度、40pFでは10V/uS程度だ。

10V/uSもあれば十分。という評価もあるだろうが、程度にもよるが多少のリンギングは許容して、より大きなスルーレートを保持しておいた方が良い。という考え方もあるだろう。

・という、トレードオフの問題が生じるのだ。

・で、この問題の要因はひとえに初段差動アンプの動作電流設定にある。

・初段差動アンプに2N3954 が起用されて以来、温度係数が0になることもあり、その動作電流設定は0.3mAが定石となっていたのだが、初段がこの電流値であると、それなりのスルーレートを確保するためには、2段目差動アンプのB-C間での位相補正Cには10pFを超えるものはあまり採用したくないのである。

・No−121以前のGOAアンプでは、ここの位相補正容量はプリアンプでは2pFから5pF、パワーアンプで10pFだったが、この点もその要因であったのだろう。もちろん、位相補正がそれで間に合っていたということでもあるわけだが。。。

・しかして、GOA時代には、安定性を重視して位相補正を増やしてアンプを低速にするより、オーバーシュートが出る程度の位相補正にしてアンプを高速動作した方が音が良い、というのが教義だったと思うが(違うか?)、この場合も、リンギング周波数から利得交点周波数が2MHz程度と思われ、外部要因で急激に発振に至ってしまう危険性は低いと考えられることもあり、その教義に従うのが良いかなぁ。。。
・ので、5pFを候補とし、結論を得るために位相補正なしの場合と位相補正5pFの場合の100kHz方形波応答を、時間軸を拡大してもう一度観る。
No-121 MCFA 帰還回路5.6kΩ+1kΩ 位相補正なし No-121 MCFA 帰還回路5.6kΩ+1kΩ 5pF
・結論。やはり5pFでよかろうて。
 
・と、一旦は思った。

・のだが、。。。いずれにしてもこれは妥協だよなぁ。。。と思い直した。

・やはり、より良好な位相補正と良好なスルーレートの両立を図ろう。

・そのためには、2N3954(FD1840、FD1841)が採用された第一世代以来の初段動作電流設定0.3mAのくびきから逃れ、初段の動作電流を増やせば良いのである。

・勿論、Idssの小さい2N3954(FD1840、FD1841)はお役ご免とする。

・ここにモールドFETを起用するのはメタルキャンプリの趣向を薄めるのだが、まぁ、良かろうて。


・で、結果、こうなった。
No-121 MCFA-2 チャンネル−1 帰還回路5.6kΩ+1kΩ 位相補正 39pF
10kHz 下0.5V/div、上5V/div 100kHz 下0.5V/div、上5V/div
1MHz 下0.5V/div、上5V/div 100kHz 1V/div&10V/div
  
No-121 MCFA-2 チャンネル−2 帰還回路5.6kΩ+1kΩ 位相補正 39pF
10kHz 下0.5V/div、上5V/div 100kHz 下0.5V/div、上5V/div
1MHz 下0.5V/div、上5V/div 100kHz 1V/div&10V/div
・各方形波応答から、位相補正は極めて良好であることが分かる。

・問題のスルーレートも、写真から0.5uSで25Vは確実に立ち上がっており、よって50V/uSをクリアしていることが分かる。ちなみにこの値は、我がNo−128?MCプリアンプのフラットアンプ部及びNo−168CDラインアンプ(改)のスルーレート値と同じだ。

・結論。

・これで行く。